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No.87 ツアー・オブ・ジャパン 第1ステージ

国内最大のステージレース、ツアー・オブ・ジャパンが始まった。
ツアー・オブ・ジャパンの前身である国際ロードレースから通算して10回目の出場。
初めて出場したのは86年。高校3年生のときだ。
当時はジュニアとかエリートと言ったカテゴリーは厳密にはなく、「高校生選抜」という選抜チームで出場。大阪ステージのみの出走で、確か30位台でゴールした記憶がある。

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去年もそうだったが第1ステージは重要な意味を持つ。
マトリックス本社は大阪市内だが、営業所は堺市内、コースから10kmぐらいのところにある。
御前試合。
安原監督はそう呼んでいる。
チームのオーナーでもある社長自らゴール地点まで観戦に来られるため、チームとしては特別だ。
去年は安原監督が
「大阪ステージで優勝したら、向こう10年間は契約するぞ」と言ったほど。このステージの重要性がわかるだろう。

大会の2週間前、安原監督がロードで走行中に事故、骨折しそのまま入院となった。
そのため熊野のときから元マトリックスの選手だった中川が監督代理として参加。ミヤタ時代にはチームメートとして一緒にレースをしてきた仲だし、そして先週の熊野でも監督代理として指揮をとっている。
今でも現場に近い人間なので気持ち的に非常に楽だ。

スタートから若い選手は積極的に攻めるよう指示。
基本的には俺のスプリントで勝負することを作戦の軸とするが、俺としては最近成長著しい松村、そして他の選手にもチャンスがあってもいいと思っている。

1回目のポイントを前に数人の逃げが決まる。
ここにはマトリックスのメンバーが入れず、次の動きを待つ。
2回目のポイントを前に吸収するが、その後の動きにも入り込めずスプリントに備える。
今回は常に後手に回ることが多い。
俺のスプリントのために集団をまとめるのも大事だが、まず先行グループに入って他チームにプレッシャーをかけることも重要だ。

ポイントを終えて集団はひとつに。とにかくゴールまでまとまった状態で進んでいく。
俺のスプリントに備えてチームは列車を作れるのか・・・
ラスト1周に入り、去年と同じようにラスト3キロでは集団内で皆がかたまって走るよう指示を受けている。だが今回は去年と比べて全体の流れが統率されていないためナーバスで前に抜けだしにくいこと、そして橋川が出場していないことで列車をコントロールできる人間がいないこと、このあたりが集団内で自分の居場所をキープすることが難しい。

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ラスト1キロに入るところでは列車は存在しない。自力が自分のポジションを確保しなければ。
他のチームの列車の動きを利用する走りをしてポジションを前に進めていくが、常に先頭で風を切る動きになるため厳しい。
最終コーナーで前方のほうでクリアーするも、イン側でのライン取りだったためにコーナーを抜けてからスピードに乗れていない。
最後の直線、多分それでも前から10番手ぐらいか。
愛三の西谷の真後ろにはまり、ラスト300m。。
西谷がスプリントを開始し加速したところでまったくつけない。
ここまで脚を使い切った直後でのスプリントだったため、さすがに脚の中には点火して爆発させるための燃料がまったくない状態。
前を攻める力はない。しかしあとは気合いで一人でも多く抜く、もしくは抜かれないように前方でゴールすることに集中する。
ゴールラインまでが去年と比べて遠く感じ、ゴールしたときには9位だった。
西谷は3位だったか・・・

今日はすべての動きが後手だった。
中間ポイントもすべて取れなかったし、最後のスプリントでも厳しい言い方だが列車は機能していなかった。
もちろん自分の力が抜きん出ていれば、チームメートに対してもっとゆとりを持たせられたのかも知れない。
しかし振り返れば昨シーズン、橋川と俺がツートップで、極端かもしれないがほとんど二人でこなしてしまえていたのが、苦しい場面でここに考えてプレーする能力をスポイルしていたのだろうか。
わからないことはもっと聞かなければならない。
俺自身わからないことがあれば、常にチームのベテラン選手や監督らに質問したものだ。
今の選手たちは俺たちに対して遠慮しているのか、俺の昔のように「しつこいほど」質問してくる選手はいない。
その昔、まだ高校生だった頃に現ナショナルチーム監督で、当時日本のトップ選手だった三浦恭資さんの自宅に突然電話で質問。
どうすれば強くなれますか?
電話するのに緊張して何度もかけなおし、そして受話器が汗でベトベトになったのを覚えている。
でも強くなるには電話しなきゃいけないと本能的に思い、レース会場や合宿中の三浦さんを訪ねて質問したものだ。
今の選手にはそういった貪欲さが少ないように思う。

今回中盤に逃げができたとき、チームのため、そしてこのステージでトップを狙う予定である俺のために何をすべきか、それを考えてアクションを起こせたか、もしわからないなら聞きにいく。そういったことが頭の中にすぐ思いついた選手は何人いるんだろう・・・
結果が悪いだけの悔しさじゃない気持ちがゴール後に頭に広がっていたのは、きっとそういったずっと頭にモヤモヤしていた気持ちがつながっていったから。俺はきっとそうだと確信している。
だがそれはこちらからサービス業のようにマニュアルに沿って教えるものじゃないと思っている。
もしそれで崖っぷちから転落してしまうチームメートがいたら、それは仕方がない、きっとそれだけの器だったのだろう、耐えられなかったそいつが悪い。
この世界は弱肉強食、強くなくちゃいけない。

明日の奈良は一筋縄でいかない難しいコース。
コントロールすることは今のチームにとっては難しいことではあるが、とにかくその気持ちが大事。
俺としてはその気持ちを見せてもらおうと思う。


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