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No.84 ツールド熊野 第1ステージ

084-01.jpg5月は全日本選手権に向けて重要な1ヶ月だ。

ツール・ド・熊野、そしてツアー・オブ・ジャパンとステージレースが続く。

ツール・ド・熊野は和歌山県の南紀、三重県の熊野地方を走るステージレースで、国内では数少ない一般公道レース。

常々ロードレースとは一般公道で行うものであって、サーキットコースで行うものはロードレースではないと感じている俺にとっては、日本では本当に貴重な存在になっているレースだ。



95年には総合3位と区間2勝。そしてスプリント賞も獲得した。

その後もステージでは勝てる位置にはいるし、相性はいい。モチベーション的にもどちらかといえばツアー・オブ・ジャパンより熊野の方が上にある。



第1ステージは俺の好きな赤城川清流コース、平坦区間とアップダウンのバランスが俺向き。攻めるポイントが比較的あるコースだし、例年後半になると消耗している選手が多い。思っている以上にきついコースで3日間のステージレースでの初日としては申し分ないだろう。



ツアー・オブ・ジャパンに向けて帰国した梅丹は日本チャンピオンの新城を軸に攻めてくる。
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シマノや愛三も前半から攻撃してくるため、マトリックスとしては非常に厳しい展開となった。

1周目から16人の逃げを見逃してしまった。

俺にも責任はあるかもしれないが、序盤のこのような動きにはチームメートにもさばいてもらわないと俺や総合である程度上位の可能性のある橋川には負担増となってしまう。

チームとしてはこの逃げは絶対逃がしてはいけない。俺以外のメンバーで追走開始。

たった20秒ほどのタイムギャップだがなかなか詰まらない。

前もここで決めたいだろうし、いきなり真剣勝負の追いかけっこ。差がつまらないので俺も追走に加入してペースアップ。しかしあと少しが追いつかない。

諦めかけたところで他のチームでも前を一度吸収したい思惑があったおかげで集団は再びひとつに。正直助かったと言うのが本音だ。

その後も動きはとまる事がなく、第三者的に見てマトリックスは常に後手になりそうなシチュエーションが多い。

俺としては最初のチームの作戦、すなわちゴールスプリント狙いで脚を温存したいが、あまり集団後方で静観しているのは厳しく感じ、危険なアクションには反応するように心がけた。



時折見せるファンボンのアタック。

起伏を利用してキレのあるアタックのスピードを武器に変える。

集団全体的に彼の「本物」のスピードには翻弄されている。そりゃそうだろう。

昨年まではラボバンクでもクラッシックレースではエース級の扱いで、その経験は本場のレース界でも引けを取らない。それが今ここで、俺たちを相手に本気でアタックしているのだから。

084-03.jpg彼のアタックのあとに集団が休みそうになるタイミングを利用してアタックして抜け出しを試みる。

だが全体的に途中から翌日の山岳コースに向けて集団全体が消極的。そしてラスト1周へと突入する。

ラスト1周に入ったところで他チームは集団全体をまとめるような動きでアシストとなりそうな選手が先頭でスピードを作る。

前に出たくない選手が間でギャップを作り、気がつくと前に数人が抜け出すような形。

俺としては最後に脚を温存したいので静観したいが、このままだと危険と判断。まずは単独で前に追いつく。

そして再び同じような形でギャップが出来る。

今度はそのまま静観するが、それが裏目に出てそのまま逃げが決まる。

前には誰もマトリックスは入っていない・・・



完全に格上のチーム、たとえば去年のツアー・オブ・ジャパンのように海外のプロチームがレースを作ってくれるのなら、完全にラスト2キロぐらいから列車を作ってスプリントに備える方法でいいだろう。

しかし今回のように自分たちもそれほどレベルの差がなくて優勝のチャンスが十分平等にある場合は、攻撃しなければいけないし、逃げ遅れるようなことがあれば、すぐに対応しなければいけない。

そしてこのような状況ならば、ラスト10キロぐらいからは逃げ決まらないようにスプリンターを援護する動きを徹底して行わなければならないだろう。

その型にはまった基本的な動きだが、個々が責任を持って行わなければ作戦を遂行することなんてできない。



084-04.jpg当然ながらどこのチームも追うことなんてしない。そしてマトリックスも序盤から常に後手に回っていることで追走する力も残っていない。

前もなぜ逃げが決まったのか把握できていない。逃げたくて逃げが決まったと言うよりも、コントロールする選手の後ろで不自然なけん制の結果ギャップが発生し、それが気がつくとゴールまで逃げ切れる体制に変わっただけなのだから。

そのため前もすさまじいスピードで走っているわけではない。

追いつくことは不可能だ。しかし今後のことを考えて取り返しのつかないタイム差にならなかったことだけが唯一の救いだろうか。



ここには勝ちにきたつもりだ。

だから勝ちの見えないスプリントはするつもりはなかった。

ただ、「もし」ということは十分アピールしておきたい。

最終コーナーを集団先頭でクリアーして加速。だが最後はもがき切るのではなく集団の2番手、13位でフィニッシュ。

39秒のタイム差。

どうしようもない時の39秒で済んだ、そんな意味合いではない。39秒「も」プレゼントした。

他の強豪チームとマトリックスを比べたとき、弱点と言えるのがこういうポカをすることが多いと言うことだろう。



終わったことは仕方がない。

明日以降どうやってこのハンディをひっくり返すのか?明日以降自分たちは何を目指すのか。それを考えなければならない。

Photo By :Hideaki TAKAGI

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