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No.082 082ルッテンベルグ(NL)

今回の遠征での最終レースはオランダ中部、オーバーアイゼル州の小さな町Luttennberg(ルッテンベルグ)でのクリテリウム。

クリテリウムといってもこのレースは起伏もあり変化にとんでおり、街中で行われる単純なクリテリウムを想像していると戸惑いを覚える。

スタートから緩やかに登りがあり、登った距離の半分以下で一気に下る。

平坦区間には荒れたレンガ道がおよそ700m。そしてそこから1キロほど、完全にオープンになって横風を受ける区間が待ち受ける。

クラッシックレースのように長い区間の横風や登り、そして荒れた石畳はない。

しかし1周が2.5キロ強ほどの周回コースで休むところがない。それこそ下手をするとまだクラッシックレースの方が休めて精神的には楽かもしれない。



スタートは抽選で決まるが、およそ集団の真ん中あたり。

昔はスタートの練習として、あえて最後尾のほうへ並んで何周で先頭へ上がれるかをチームメートと競ったものだ。

80人のクリテリウムでおよそ3キロ以内。どんなに抜きどころがなくても、とにかく踏み続けて前に上がった。

今はそんな力技は厳しいかもしれない。



スタートして早く前の見える位置へ行こうと上がる。

特に登り区間は車一台分強の道幅しかない上に横風で厳しい。

できればそこまでにある程度上がってしまい、登りでは少し一をキープして休み、レンガ道で再びあがっていく。そんな感じでレースを進んでいく。

ゴール前のオープンになった区間では多くの選手が警戒し、その結果横風区間の前からスピードが上がっていく。ここで後ろにいると危険、とにかくきついとか休みたいと言うことは後回し、まず前に上がるようにする。



およそ30分ほどで先頭グループが形成。10人強だろうか。前に入れなかったことで展開的には厳しいが、昨日のレースでは思った以上に厳しく感じたので、消極的かもしれないが今日はまず集団で確実にゴールへと帰ってくる、そしてその中で「何か」をできるようにしたい。



先頭集団からは30秒〜1分で推移。

クリテリウムの場合は個人参加なのでチーム単位で組織だってというレースでの動きは限りなくゼロだ。

その状況で1分というのは非常に厳しい差だ。

集団の中でも多くの選手がアタックをかけて前を追う展開を願っているようだ。

もしこの動きの中で自分にチャンスがあるなら動きたいが、自分からは積極的には仕掛けず、しかし集団の前が見える位置で待機する。

距離を重ねるごとに集団はコンパクトになっていく。たぶん30人強か。



ラスト20キロを切って再び集団からは何人かが抜け出し、集団はほんの少し残された賞金へのスプリントの気配。

さっきまでは深追いしなかったが、こうなると皆が賞金が欲しいために抜け出すのは至難の業。

事実、これは抜け出して集団皆賞金圏外だな」と思ったことがあったが、異常なスピードで吸収。あと10キロ続いたら、先頭グループも射程圏内??というスピードだった。



ラストはスプリント力のない選手が登りで仕掛けてペースが上がるが、結局はゴールスプリント。

最初は参加して賞金を!と考えたが、結局翌日にヨーロッパを離れるということで、危険な世界へと足を踏み入れることを断念し、集団の後方でゴールラインを超えた。



完走はたぶん35人ほど。

スタートが120人ほどだったことを考えるとかなり厳しいレースだったし、そこでゴールできたことでほんの少し昔を思い出し、そしてしばらくは忘れかけていた厳しさを心身ともに思い出すことができた。



俺は選手、いや戦士である。

海外で走っていた頃、春そして秋のクラッシックレースシーズン、いつも頭の中にあった言葉だ。

スポーツマンシップにのっとり・・・

そんな言葉がしっくりとこない、「勝つか負けるか」という表現よりも、「生きるか死ぬか」いつもそんな感触を持って走っていた。

雨に濡れた石畳、とにかく危険回避のために集団の前方で突入したい。

しかしその行為自体が既に危険行為だ。

激しい金属音とともに少し後ろの選手が地面に叩きつけられて、しばらく「戦場」から離れることも多々あった・・・そう、そこは俺にとって何時も戦場という感覚しかなかった。

日本で走っていて、そんな感覚いつから忘れていただろう・・・



この1ヶ月、俺が日本に帰ってから忘れかけていた感覚が多分その上記のことだったと思う。

あと8ヶ月。

あと8ヶ月、俺は戦士である。

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