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No.081 南フリースランド一周レース
今回のヨーロッパ遠征ではオランダをベースに活動しているが、最初の2レースはドイツのレースに出場した。ベルギーではレギュレーションが変更され、コンチネンタルチームの選手はアマチュアのレースには出場することができないためだ。
プロのケルメスと呼ばれるナショナルレースは3月にはほとんど開催されないため、こうなるとレースに出るにはドイツ、もしくはオランダでクラブに所属して走ると言うことになる。
だがオランダでも3月から4月上旬にかけては非常にレースが少ない。
帰国直前になってようやくオランダでもレースに出場する機会に恵まれた。
オリンピア・ヘーレンフェーンはオランダ北部のフリースランド州のクラブで、80年代はチームロードの世界選手権優勝メンバー、のちにバックラー、ワードパーフェクト、TVMを経てポルティでグランツール要員だったヘルツ・デフリース、オランダのアマチュアチャンピオンになり、シマノグリーンピアロードにも来日経験があり、プロでも即戦力を期待されながら若くして心臓発作でこの世を去ったヨハネス・ドラーヤ、長らくオランダのアマチュア界のトップに君臨したトニー・ターベンなど、一流選手が所属していたが、現在は衰退し、フリースランドと言えばスピードスケートのメッカだが、そのスピードスケート選手たちが夏の「オフトレ」の一環でチームに所属している程度だ。
だが現在長距離では世界のトップである「スベン・クラマー」なども所属し、レースの経験はまだまだ浅いが、その身体能力の高さでレースでは結果を残し続けている。
チームとしては俺が合流することに非常に好意的だった。
レースはオランダ北部の平坦で行なわれるのだが、風をさえぎる遮蔽物がほとんど存在しないところを180キロ走り続けるレースだ。
特にこの日は朝からすこぶる風がきつい。完走することもままならないはずだ。
スタート前から優勝候補であるアールト・フィールハウテン(07年までスキルシマノのキャプテン、ラボバンク時代にはツールや世界選手権で活躍)の所属するバタバスチームが序盤から仕掛けるらしいと言うことは気配で察知した。
オランダのレースらしくニュートラルから激しく位置取りが始まる。
そしてスタートと同時にスプリント開始。
1キロ地点、最初のコーナーを曲がるといきなり横風開始。
どんどん前から千切れてくる。
コーナーを抜けてすぐにスプリントで前の30番ぐらいに上がるもこっちもきつく、ギャップができると詰められない。
レースはまだ始まったばかり。集団後方にいるであろう有力選手に任せるつもりで少し位置を下げる。
だが徐々に徐々に前との差が広がっていく。
後でわかったのだが、アールト・フィールハウテンを擁するバタバスは、ニュートラルスタート時こそ集団の後方に埋もれていたのに、たった1キロで集団の前方へ、そして春先から好調のチームラウテル・ダックカペーレンもほとんどのメンバーが前に位置しているようだ。
そうなると前のメンバーが30人強だと考えると、10人以上が上記2チームということになる。これは非常にまずい。
状況はよく理解できた。しかしその状況を打破するだけの力がない。今はただ集団の中ほどでとにかく喰らいついていることに精一杯で、何かをすることは現実的に不可能だ。できることがあるとすれば、1分でも長くここにいることぐらいだ。
走り出して30分以上が過ぎ、オランダの真ん中に位置するアイゼル湖畔へ。
このあたりに来ると、ただでさえ強風なのに突風レベル。しかも常に吹き続けているので突風という表現はおかしい。
集団は距離をこなすごとにどんどん目減りしていく。
オランダの横風区間では、集団前方に位置する選手たちは皆が協力して後方の選手をふるいにかける。
この手のレースはヨーロッパでプロで走っていた時代、もっとも得意としていたのだが今回はとにかくきつい。
堤防の上はとんでもなくきついし、道幅も狭いために風除けを使える人数は多くて10人。
それまでに前に上がらなければ、と考えていたが、その手前で前の選手が千切れてしまい、その差を埋めることができない。
先頭グループ、そしてさっきまでいた追走のメイングループでおよそ40人ほどだろうか。
俺はその後ろの追走グループ。ここにはおよそ20人。もう後続は姿かたちともに見えない。たったの50キロしか走っていないのに、コースでレースをしている選手は50人強しかいない。これがオランダのれーすなのだ。
協力して前を追おうとするが、横風で力尽きた者同士。先頭はバタバスやラウテル・ダックカペーレンらが協力してペースはどんどん上がっている。
先頭との差はおよそ2分。メイングループとの差は1分弱。前に追いつけば何とかなるかもしれない。とにかく我慢。ここさえ耐えれば。だが徐々にだが前との差も広がり始める。
80キロを過ぎたところでメインとの差は1分強。ここで審判からグループごとレースから除外。
オランダのレースでは交通規制の関係上、まだそれほど差は開いていないと思っていても、審判が「もう追いつくことはないだろう」と判断すれば、そのまま除外されてしまう。
特にワンディの場合は容赦ない。
久しぶりに走ったオランダでのレースはかなり厳しく、いったい今の自分には何が足りなくて何が必要なのかを思い知らされたが、厳密に見れば何も持ち合わせていない、すべてが足りないのではなく「すべてがない」のではないだろうか、と感じるものだった。
俺が力尽きて集団から離れてしまったところで、クラマーはその身体能力の高さで横風区間をクリアー。とてもじゃないが彼についていこうという能力が俺にはなかった。
なんと30人強しか完走しなかったこのサバイバルレースで20位台でフィニッシュし賞金を獲得している。
今回のオランダ滞在で3レース消化し、明日今回の遠征での最終レースを迎える。
今日のいやなイメージを一掃できるような走りができればいいのだが・・・
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