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No.076 ツール・ド・台湾 第6ステージ

今回の台湾はそのほとんどが周回レース。
その中で第3ステージと、この第6ステージがロードレースらしいステージだ。
このステージは緩いアップダウンの海岸沿いを北上し、1kmほどの登りをこなしてから同じ海岸線を戻ってくるコースだ。
このステージを含めて3ステージは台北もしくは台北の行政区域。
海外チームは台北市内の立派なホテルに滞在しているが、e-MAは台北郊外の温泉地に宿泊する。

06-01.JPG第6ステージの朝、ホテルを出るときの天候は雨。こちらへ来て初めての雨じゃないだろうか。
ヨーロッパでは何度も雨のレースを体験したし、車に乗り込んでスタート地点へ向かう際、晴れない気分で空を見たのを思い出す。今日もそんな気分だ。
空を見上げる瞬間、長い間忘れていたベルギーでの日常生活で普通におこなっていたことの数々を思い出す。
そう、こうやって天気の悪いとき、いつも雲の間から明るいところを探したり、風の向きを見て晴れるのかどうかを考えていたなぁ〜と。

スタート地点には少し早めに到着。
このような天気だったら特にアップする必要もない。走りに行く方が、体を冷やしてしまう。ギリギリまで車の中で体を冷やさない方がいい。
スタートからしばらくはパレード走行、その間に体を徐々に温める。
リアルスタートと同時に激しくアタック。しばらくは道の狭いところが多い。ここでまずは逃げを打とうということか。俺は他の動きには左右されぬように静観、しかし集団のある程度前に配置し、万が一の際に取り残されないようには注意する。

海岸沿いのアップダウンを利用して集団は逃げを打ち、そして捕まえ…捕まらなければ集団は次の動きを見せ…アクティブな状態だ。
今日の俺たちの昨年は昨日と同じくリウの台湾人総合。そしてその他は二の次だ。
そのうち登りでリウがアタック。しばらく集団から30秒ほどをリードする。
だが3人のローテーションでは逃げも長くは続かず、往路のアップダウン後半には捕まってしまう。
下り区間で落車発生。
これには台湾人総合トップのライ・クァンファが巻き込まれる。
特に俺たちはこのあと彼を窮地に追い込むようなアクションは起こさなかったが、万が一の動きがあるので集団前方で待機。そして登りへ。
コース一番奥にある1kmの登りでは、それまでチャンスをうかがっていた選手たちが攻撃開始。
俺はリウの動きを見ながら集団の中ほどで登りへ。
集団の中だと詰まってしまう可能性がある。俺は登り入り口ですぐにインナーにシフトダウン、インナーは41Tのスプロケットが16T辺りのギヤで様子を見る。
途中つづら折れで登る箇所があるが、その辺りで一度詰まって集団前方はどんどん加速するので一列で登っていく。
頂上まであと少しというところでリウが少しずつ遅れだし、俺の位置まで下がってくる。
リウを励まして遅れないように前に上げるように走る。
俺たちの後ろの選手たちはすべて千切れ、集団は頂上では40人弱ほどに絞られる。
下りではウェットなのであまり速く感じない。それでも下りの得意じゃないリウはままならない様子。
下りきっての直線では逃げたい選手たちがペースアップ。一列の集団最後方で、今にも力尽きそうなリウがいる。
何とか耐えて、もしかしてこのまま行けば台湾人総合も・・・と考えるものの、およそ5kmほど走ったところで後続が合流して集団は再び一つに。
その後何度かアタック合戦があり、主要選手が逃げを決める。
俺はリウの動き、そしてライの動きを見すぎて逃げに乗ることはできなかった。
集団の後方にはライもいる。どうやら集団に復帰したようだ。
落車でいなくなるのはフェアじゃないと思うし、可能であればきっちりと勝負をつけたい。
しかしライとのタイム差をひっくり返せるのだろうか…リウの状態を見ていると集団での完走も厳しいかも知れない。

集団内でも逃げ遅れてしまった主要選手がいる。彼もこの逃げを快く思っていない。
西谷や宮澤らも逃げている。その動きがリーダーや総合上位陣をすべて引きずり出す結果になった。
俺個人的には願っても無い動きだが、力尽きているリウにはこのスピードアップはかなりきついようだ。
顔を見ても余裕は全く感じられない。ゴール後に話を聞くともう精魂ともに力尽きていた状態で走っていたようだ。

残り距離が短くなりこのまま先頭グループは逃げ切りか?
と感じた頃、集団ももう1ランクスピードアップ。
徐々にリーディンググループの気配を感じる。
総合成績を考えると前の選手たちを吸収したいスキルシマノやリーダーチームにとっては何とかしなければならない。

1分を切っている。
追走グループの能力次第だが、追いつけるのかは微妙な位置。
ただ何があるのかわからない、調子がよければスプリントできるようにはしたいと準備はしておく。
徐々に集団の前の方へ位置を上げ、その都度リウを確認して走る。

ラスト10キロを切ったところでロータリーを通過するが、曲がる気配をギリギリまであまり感じなかった。まっすぐかなと思っていたら左折だった。
実はこれが今日の勝負の中で非常に重要な意味を持っていた。

06-02.JPG追走していた集団のリズムが少しおかしく感じる。
ほんの少し前に先頭グループらしきものは見えている。前を捕まえなくてはならないヘルスネットの連中にあまり勢いを感じない。
ラスト3キロ辺りで集団の動きは明らかにおかしい。
そして気がつくと逃げていたと思っていた宮澤が後ろから抜けていく。
宮澤を前に入れてスプリントへ。
ゴールが見えた時点で5番手。
韓国の朴、そしてもう一人韓国の選手が前にいて俺。
無理に捲くらなくてもなだれ込みでいいやと思いついているだけだったが、後ろから一人に捲くられ、前の選手のあまりスピードも速く感じなかったので、抜こうと左に進もうとした瞬間、前の韓国の選手が落車。
目の前の進路を塞がれ、すぐに右へとハンドルを切る。間に合うのかわからないが・・・

立ちこぎの状態で一度バイクを体より後ろに引き(ゴールのときに自転車を投げるという表現があるが、その逆)脱出。
俺の後ろから左へと捲くろうとしていた台湾の選手はそのまま避けきれずに韓国の選手へと突っ込んで行ったようだ。
集団の5番手でゴール。
もう少しだったなぁ〜って気分はまったく起こらない位置。
集団から逃げ切ったのはどうやら5人。と言うことで10位に入賞。

06-03.JPG集団から抜け出したと思っていた西谷らだが、どうやら俺たち集団も間違いかけたローターリーをそのまま突き抜けて走っていったようだ。それも先導バイクの先導ミスで…
宮澤はそのまま途中で引き返したので集団日復帰してスプリントできたようだ。

レースの序盤もしくは収拾がつく中盤までならば、例えば踏み切りに引っかかって吸収されたとかだったら、もう一度タイムギャップを作ってその場から再スタートということがある。
俺も踏み切りで停止の煽りが一度あった。
しかし今回はレースもラスト10キロほどと、ゴールに近すぎて再スタートをしたりすることもできなかったし、地元の協力を受けてレースを行っているということで、UCIの審判もこのあたりは主催者の判断に委ねることが多い。
もしコースミスをすべて主催者や先導者、もしくはボランティアで働いてくれている人たちに責任を追及するようなやり方を行えば、頑張ってくれている人たちを否定することになりかねないし、そうなればみんなでレースを盛り上げようとする人たちが減ってレースは衰退する可能性があるだろう。

逃げ切った選手の扱いはそのまま、コースミスした選手たちは基本的に集団ゴール扱い・・・それが主催者のくだした判断だった。
俺としては、審判の下した判断は正解だったと思うし、これ以外の答えを引き出すのは不可能に近いだろう。
俺が同じ立場だったら、直後は興奮状態で荒れたかもしれないが、多分冷静になればそれで納得しただろう、多分…

危険なレースだった。
ゴールしてもしばらくは興奮状態だったが徐々に落ち着く。
韓国の選手は鎖骨を骨折したのか、韓国のチームカーの方に見に行ったが戻ってきていないようだ。
明日から2日間はショートコースのクリテリウム。
今日以上に危険かも知れない。気をつけなければ…

写真:
06-01:去年までチームメートだった廣瀬。今回は台湾チーム「キナンCCD」での出場。
06-02:ゴールスプリント。集団の5番手でゴール。
06-03:ゴール直前では目の前で落車。落車した選手はしばらく動けない

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