masahikomifune.com:

ホーム > レースレポート > No.066 ジョラジャ・マレーシア第3ステージ

No.066 ジョラジャ・マレーシア第3ステージ

第2ステージのリザルトを見ながらのチームミーティング。
いつも熱いレース運びが信条の安原監督から厳しい檄が飛ぶ。
それは無理も無いだろう。
2ステージを終えて個人成績は俺でも3分半遅れ、俺と涌本を除いては6分以上遅れ、そして見せ場の無い日々。区間成績でも絡むことができず(これは俺にも責任はあるが)。
現役時代、いつも攻めの姿勢を貫いてきた安原監督から見た視点では、とてもこの2ステージはやり過ごせないものがあったのだろう。だがこの檄の甲斐あってか、第3ステージは積極的な展開だった。

スタートと同時に総合成績、そしてスプリント賞へのアクションを俺が起こす。
しかしさすがにこの攻撃は多くの選手によってリセットされた。
オープニングシーズンで勝利したことは、もちろん標的にされて当然だ。
この後何回かの攻撃があるものの、1回目のポイントに向けてまとめたいLe Tua、そしてそのほかの選手の動きでまとめられる。
ポイント通過後、辻兄が安原監督の檄を形にするようなアタックを披露、そして逃げが決まりかけた瞬間、ここまでも積極的な走りを期待されていた松村がようやく攻撃に出て合流。7人での逃げが始まった。
この逃げには飯島(日本ナショナルチーム)が入っており、総合ではたったの1分強の遅れのため、追走されてしまう可能性が非常に高い。
だがレースは何が起こるかわからない。攻めなければ答えは出ないし、そして予想を覆すことも攻撃してみないとわからない。2人の若手の入ったこの逃げを俺たちは集団で見守る。

マルコポーロは集団をまとめて一定ペース(テンポ)で追走開始。差はおよそ3分半。できれば5分には広げて欲しい。しかしここで前もきついのか、それとも思っている以上にマルコポーロがいいペースなのか差は広がらない。
残り距離がおよそ60キロを切ってこの差。そしてこの差は縮まることなく残り距離を減らしていく。
前を行く飯島はリーダーを奪うことだけを考えて攻めているに違いない。この先頭グループの状況で若手の2人はどのように対処しているのか…

そしておよそ30キロを切り、逃げ切れるか??と考えていた矢先、ここで前に動きがあったのか先頭との差が縮まり始める。同時にここが勝負どころとLe Tuaが追走開始、展開が動きだす。
激しいフィナーレを予感させるかのようにスコール。前が見えないほどの雨。そして前との差は一気に縮まり1分半。そのタイム差がアナウンスされたところで、いきなり前に数人が。
松村、そして辻兄も含まれているが全員ではない。どうやら飯島ともう一人は抜け出したようだ。
ここで雨は止み、集団はスプリントに向けて進んでいく。
俺は昨日の失敗もあるので、まずは辻弟、そして今日は向川と連携しながらの位置取りが基本。しかし今日はまず自分でも的確な位置を確保すべく集団の中でアクティブに動く。そうすればチームメートも追従せざるを得なくなり、自然とスプリントになればどの位置を俺が欲しいのかを覚えてくれるだろう。
ラスト4キロになり、集団の位置取りも徐々に激しくなる。昨日と同じく想像以上にきつい。
何がきつい?そう自分に問いかけると、普段競りなれていない選手たちが多いように感じられる。それは地域柄レースに慣れていない選手が多いのか、それともシーズン序盤で体が動いていないのか…何が理由かはまだわからない…
ラスト3キロをきる。ここで逃げていた飯島ともう一人の選手が視界に入る。
なんとなく自分の立ち位置が見えてくる。そして辻弟、向川も集中力が増してきたかポジションを主張していく。ここで後方で落車。
ラスト2キロを切って一度集団は緩んで横に広がる。ここで埋まりかけるが向川が脱出。俺も続く。
後方からコウデントソフをアシストする李(マルコポーロ)がスルスルと抜け出し、集団先頭へ。うまい。この自然なレース運びがレース慣れをしているなぁと感じさせる。
ラスト1キロを切ってロータリーをぐるっと大きく右折してゴールへの直線およそ600メートル。ロータリーへの進入如何で今までの走りすべてがなくなってしまう可能性がある。
俺は向川へ「あがれ!!」と指示。インから攻撃している俺たちは、最悪スピードが乗りすぎてもコースアウトはしにくい。
もちろんアウト側の選手を圧迫するのでリスクはあるが、前日のようにアウト側から攻めれば、イン側の選手に圧迫され、スピード次第ではオーバースピードで曲がりきれなくなり最悪の場合はフェンスに激突である。
向川はここで若干ブレーキング。経験の差が出たか…俺なら間違いなく強引にノーブレーキで勝負だ。
コーナーを出ておよそ20~30番手。この位置だと遠い。
コース右側のスペースを利用して向川がスプリント開始。ここで前に上がりきらなければ話にならない。そしてラスト300メートル、向川が横の選手と接触してそのままバランスを崩して落車。
そのまま俺の真正面は向川と向川のバイク、そしてその横の選手が倒れこみ逃げ道がなくなり、これから一瞬先には、だが感覚的にはもうあと少しすれば、この落ちているものによって俺も地面へと誘われるのだろう…

真後ろにつけていた俺は、久しぶりに恐怖が全身を覆い、瞬間的に今までの大落車のイメージが俺のメモリーからリロードされ鳥肌が立つ。
俺の前輪が衝撃を受ける。きた…
しかしその瞬間、まるで奇跡のように俺のバイクのスペースだけクリアーになる。
瞬間的なことだったので記憶にあまり無いが、何かに乗り上げたようだがそのままそこを通貨、そして大きくバランスを失いバイブレーションしていた俺の前輪は、挙動が少しずつ収まり元の状態へと戻っていく…

後方は大惨事。
まずはとにかくゴールへと。俺はゆっくりとペダリングしゴールした。
ゴール地点でまずは高ぶった気持ちを徐々に落ち着ける。そうしているうちに向川が前からやってくる。
見た目的には大惨事だったのだが、思いのほか怪我もなかったようで、こちらも奇跡だとしか言いようがない。

成績は残せなかったが形はよくなっている。
ただ今日の失敗の原因は、自分たちで主導権を握るのか、それとも他のラインにあわせるのか、その辺りの見極めが中途半端だった。
俺としてはある程度ガチンコで勝負してもいいと思う。
今日もLe Tuaのマナンが制した。確かに彼も彼のチームも強い。
しかしまずはスプリントに至るまでの経緯で勝負してもいいはずだ。
まだまだ若手には厳しいものがあるかもしれないが、やらなければわからない。それは今日の勝負を試みた辻兄や松村と同じ。
今日の結果は16位。
ここまでの成績や獲得賞金を見ても、このまま終わってはいけない。
なんとか安原監督の思いを形にすべく動かなければ…
まずは今日までの疲れをきっちりと取り、明日に備えたい。

Feed

Powered by

Search