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No.055 '08ツアー・オブ・タイランド 第6ステージ

ツアーの最終ステージゴール、チェンマイが徐々に近づいてきた。
2008racereport-no.055-01.jpgのサムネール画像
今日は山岳賞が2回設定されているコース。距離こそ146キロとここまで行われてきたステージ比べると短いものの、総合もタイムボーナスで逆転可能な範囲に3人、そして総合5位当たりの争いは2秒ほどに数人が含まれている。

中間のタイムボーナスそして逃げ切るということが必須、激しい最終ステージの気配を感じる。



スタートからスロヴァキアとイランなどが集団をコントロール。

スロヴァキアはイランの総合優勝に協力するようだ。こういうことはヨーロッパでまったくないわけではない。

例えば監督同士が知り合いとか、元チームメート、過去の大会で同じホテル等で気心が知れた連中・・・もしくは何らかの利害が一致など。ただ言える事はコントロールが難しいイランのみでなくスロヴァキアが集団のペースを作ることで、レース自体は走りやすくなるということだ。



最初の峠から仕掛けが始まる。

第4ステージで一度山岳賞があったのみで今日が2回。と言うことは今日で山岳賞は逆転も出来る。そのため最初の山岳賞は思いのほかきつい。

速いというほどではないが、休めない淡々としたペース。

10キロほどの登りで距離と標高を確認しながら集団で耐える。そしてラスト1キロでほんの少し離れるが、後方には日置がいるグループを発見。頂上で少しペースを落として彼を待つ。そして日置には集団まで全力で追走を行ってもらう。

下りきったところで集団は再びひとつに。

下りでも集団はコントロール下にあり、そのため復帰も痛みを伴わず完了。

このあと2回目の山岳賞までの間に、プロフィールを見ると短いが急勾配の坂がある。ここでポイント賞を争っている選手のコンディションを確認する。

俺自身は2時間ほど脚を回して調子が戻った。あとはゴールまで山岳賞を耐えればいい。そのとき他の選手はどうなのか、それを確認しておく必要がある。

昨日でポイント賞を獲得した内間は俺をマークして走っているのか近くにいる。登りは確実に重そうだ。脚には序盤のようなキレはあまり感じない。

ヴェトナムの選手はもう既に売り切れている感じ。ただ独走力は高いので千切れても復帰する可能性はある。

スロヴァキアの選手は常に先頭交代。多分スプリント力はかなり削られていくので、あまり注意しなくてもよさそうだ。



2回目の山岳賞へ。

頂上の手前3キロ弱に中間ポイントが設定されているが、もちろん登り。

多分これは総合上位の選手、登板力に優れた選手を意識してのことだろう。そのため総合上位が激しく攻めあう。俺も何とか喰らいつくがポイントは取れず山岳賞への激坂へ。

集団は大きく分断され、俺は辻を含む10人ほど。辻は頂上で俺を待ち、先行する30人ほどに合流。ヴェトナムの選手は大きく遅れ、内間も遅れる。ただスロヴァキアの選手は集団に残っている。



内間はサポートカーの隊列で合流。ヴェトナムの選手だけは脱落したので、このまま順当に進めばポイント賞3位以内は間違いないだろう。あとはその最低ラインの目標からどうすればステップアップできるかだ。

ラスト30キロを切ってアタックが激しくなる。先行する数人に松村を単独で追走させ合流。松村は今大会で一番潜在能力を引き出せた選手だ。

全日本実業団の個人追い抜きと団体追い抜きのチャンピオン。中距離でのスピードはすばらしいものをもっている。

それをロードレースではなかなか生かすことが出来なかったが、今回は日に日に自分の持ち味に磨きをかけている。やはり一番大事なのは平均点の走りではなく、得点を稼げるところできちんと稼げること、得意分野をしっかり持つこと、そういう意味で松村の武器は高い独走力を生かした走りなのだ。



先行するグループとの差は15秒ほど。

松村では勝てない。そしてコバックが前にいる。追いつかないと勝ちもポイント賞も見えない。

俺はアスファルト工事区間でダート化した区間およそ1キロの後半でアタック。

それはヨーロッパ時代に石畳、そしてダートロードを走るレースではチーム内でもトップレベルだった自分ならできる!と判断。まだ感覚的に当時の力を吐き出せる気がしていた。

アタックした瞬間、後続は案の定誰も追走できない。だがアスファルト区間に入り集団に猛追をかけられる。

もう合流というところでフィリピンが集団を引き連れて合流。彼らもチーム総合を考えると逃げられるのは無視できないのだ。



微妙な横風でのアタック合戦で集団が分裂。俺は最終便で合流すべく間隔を開けてアタック。後ろには内間がいたが追従できていない。

多分このままゴールまで行けば力では勝てるだろう。ただ単純にスプリントをするだけならば。

位置取りや他の選手との駆け引きも含めると何が起こるかわからない。であれば先行しておくに越したことはない。だがこれも結果的に集団はひとつに。



ラスト10キロ。辻を位置取りのための風よけに使う。松村は俺の後方で他の選手をマークさせないように配置。

多くのチームが最終ステージで結果を狙うべくポジション争いが熾烈化。松村などは俺の後ろにいたのに弾かれたらしい。

辻は俺が今まで指示してきたことを指示しなくても、ただ自分の意思で、俺だったらこういうことを欲しているだろうと考えながらポジションをキープしてくれている。俺が受けるはずの風圧をすべて受け止めて・・・



ラスト3キロ。ゴールが近づき殺気立ってくる。後方からもさっきが背中に伝わる。

ラスト1キロで俺は好位置にはまり込み、11Tのギヤでスプリントに備える。

風上を押さえた。最悪の場合脱出できるラインを持っている。

ラスト300メートル。ここで更に風上からラインが突っ込み、集団の中に埋もれる。

一気に20番手当たりに落ち込むが即座に風下側に退避。前はトップスピードに乗っているので離れたが、おかげで集団は伸びて横から上がりやすい。

ラスト150メートル。ようやく集団の壁から脱出しスプリント。勢いは乗っているので踏みまくり。だが先頭には一歩届かず3位と言う結果に終わった。

2008racereport-no.055-02.jpg今日のスピードは自分でも満足がいくほどだったし、勝てる力を持っていた。

だが勝てなかった。今日は100%俺の失敗だ。チームメートは完璧なまでに働いてくれた。

最終ステージ、俺はほとんど無線で作戦のことは伝えなかった。

伝えるとすれば補給のリクエスト、そして応用的な作戦のみ。

今までレース中やレース前後のミーティングに基本的なことを伝えるシーンが多かったが、今ステージはそういう意味でまったくストレスなくレースをすることが出来た。



3位。UCIポイントが2ポイント。俺自身ポイントを加算できたのは嬉しい。

そしてポイント賞は3位(2位内間と同点。1位はコバックで1点差)

最終的に表彰台へは3回「マトリックス」として登った。

当初思っていた以上にハードで、そして思った以上にチームとしての機能が充実。

そして3年ぶりにUCIレースでの勝利など・・・

俺にとってこのタイランドは記念すべき2008年シーズンの始まりとして、きっと一生忘れない思い出となるだろう。

写真
01:撮影Takumichi MATSUMURA
最終ステージスタート前。疲労はあるが、やる気が疲れを消してい
るかのような良い
状態だった。
02:撮影Takumichi MATSUMURA
ゴールでは勝てるものを持っていながら3位に終わる。

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