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No.051 '08ツアー・オブ・タイランド 第2ステージ

2008racereport-no.003-01.jpg第1ステージが終了し、俺の体はいきなり満身創痍。

両脚とも攣ってしまったため、朝から脚がまともに動かない。いったい今日は何キロ走れるのか想像もつかないし、もしかすると速攻で終わるかもしれない。

今日のステージは昨日よりも長い186キロ。

コースプロフィール的には主要道をただ北上するだけの単調で平坦なコース。

昨日もそうだったが日陰はなさそうで、そしてゴールまで延々と向かい風っぽい雰囲気だ。



チームは第1ステージの時点で総合の夢を完全に失い、区間賞やその他の賞、あとは「何が出来たか」にこだわったレースをしていくしかない。

俺はひとまず今日はおとなしくゴールを目指し、そして若いチームメートたちに俺の今までの経験を少しずつ伝えていくことを考える。でもまずは自分が無事にゴールにたどり着けるのかどうか・・・



昨日の疲労が集団全体から見て取れるも、スタートと同時に単独でアタックする選手。しばらく泳がせるかと思いきや、リーダーを着用しているタイのチームがアタックして追走。これで集団に火がつく。

俺としてはこんなところから攻撃開始されるとゴールできるのかが微妙。まずは集団のほぼ後方で風の当たらないように走り、とにかく攣ってしまったところを解すように軽いギヤでケイデンス重視(105〜115回転/分)で進んでいく。



前半の撃ち合いにピリオドを打ったのは辻。

辻のアタックで9人の逃げグループが形成され、集団はタイの追走に託す動きとなりひとまず小休止。

今回タイチームはナショナルチームとタイ・オールスターズという、実質的にはもうひとつのナショナルチームが参加している。そのため追走もかなり強力。2チームが同じ意思の下、行動してくるのだから。



先頭グループはかなり良いペースで逃げ続け、最大7分以上の差を広げる。

残り80キロ、ここでこの逃げを良しとしないUAE、イランが合流。徐々に差を詰め始める。このペースだとゴールまでにタイムギャップはすべて食い尽くしそうだ。

集団はおとなしく静観、俺たちは暑さ対策できっちりと水分補給すべく交代でチームカーへとボトルを取りに行く。



ラスト20キロ。いよいよ前が見えてきた。前は若干アタックを繰り返してペースダウン。

前を捕らえ、集団は活性化しアタック開始。

ここで松村が数人で抜け出す。ラスト10キロを切ったところで抜け出していくように日置や松村に指示していた。

この逃げはメンバーもよく、このまま行くか?と思われたがマレーシアやヨーロッパチームの選手たちによって吸収、フィリピンの選手が単独で逃げる。彼以外は集団に。そしてラスト1キロ、集団スプリントに。

日置のアシストで好位置をキープ。前を行くフィリピンの選手はギリギリ逃げ切るか逃げ切れないか・・・

やや右からの向かい風。集団は左へ。俺はつまりかけて15番手ぐらいから右にはみ出して前方へ。
2008racereport-no.003-02.jpgのサムネール画像
風を多く受けることで失速するところだが、この日は違った。

ここまできっちりとチームメートに温存してもらえたし、昨日の疲労がなくもなかったがきっと他の選手にも疲労があるのだろう、他の選手に対してはまだキレがあるように感じられた。

11Tのギヤに自分のすべてのパワーを入れた瞬間、他の選手が止まって見え、そのままフィリピンの選手もラスト20メートルでかわし、久しぶりのUCIレースで優勝。

ゴールラインを超えて数秒経ったところで急に冷静さが薄まり、嬉しさがこみ上げて思わず声が出た。

まだまだやれるな、そしてここまでやってきたことが間違っていなかったことが証明できたと感じた。



2008racereport-no.003-03.jpgしかし今日のチームメートは昨日の失敗が嘘のように素晴らしかった。

いつも以上に自分を捨ててチームのために貢献。ランドバウクレジットで走っていた頃、ビューレンス監督から聞いた言葉を思い出す。

「すべては一人のため、そして一人はすべてのもののために」

チームメートへの感謝ももちろんだが、それ以上に自分に対しても責任を果たせたと言うことが非常に嬉しい。



俺が加入して1年、ようやく安原監督の目指してきたひとつの「形」が完成してきたように感じる。そして1年かかってやっと監督に恩返しをすることができた。

写真説明
中:Steve Thomas
下:Takumichi MATSUMURA




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