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No.045 '07Jツアー第1戦「実業団カップ」
Jツアーの第1戦「実業団カップ」が4月28日に群馬サイクルスポーツセンターで開催された。
例年だと東日本実業団が行われるのだが、今年は新たなレースとしての各付けとなった。と言っても群馬で行われるレースと言うことに作戦も何も変わりはない。
レースに向けて徐々に天気予報は悪い方へと変化し、レース当日朝はとうとう雨。それも暖冬がウソのような冷え込み。そういえばアトランタ五輪選考会も同じような時期で雪混じりの景色、かなり寒かったのを覚えている。そのときの記憶が蘇る。しかし群馬で雨の日に走った経験はない。安原監督にしても2度目か3度目とのこと。意外と群馬で雨のレースというのには遭遇していないのだ。
前日のミーティングでは俺ともてぎで優勝した橋川を軸にレースを展開することを確認する。
同時期に修善寺ではトラック競技の記録会が開催されており、そちらに西日本チャレンジで優勝した向川、そして辻、松村が参加しており、愛三やミヤタ、そして少人数ながらも強力なシマノに対しては厳しい展開が予想される。そこをどうやってカバーしていくのか?どういう風に俺の経験で対等に戦っていくのか、それがキーポイントになるだろうとスタート前に考えていた。
ス タートから寒さとウェットなコンディションでスピード自体は速くはないものの、それはドライと比べての計測上のこと。実際集団が常に一列で進んでいること を考えれば単純に遅いのではなく、ウェットなために走れるラインが非常に狭く絞られて体感上は速いのだと言えるだろう。そして橋川がヘアピンを先頭で抜け、俺が番手でアシスト。そのまま逃げてくれることでチームは主導権を確立していく。
一度中盤には20人ほどの先頭グループが決まりかける。しかし全体的にやや消極的な展開ながらも結果的には何人かが前をリードする形が続いている。そんななか、およそ残り半分ほどでレースを決定付ける逃げが形成された。
そこにはミヤタが出場する7名全員、シマノも参加する4名全員。愛三は廣瀬と西谷。マトリックスは三船、日置、森の3名。少しグループが大きすぎる。もう少し絞りたいが、俺たちが仕掛けるのは失敗したときを考えると危険だ。俺自身判断力も中途半端な状態で、やや他力本願的な展開でレースを進めていたとき、6人の逃げが決まる。
柿沼・鈴木譲(ミヤタ)
廣瀬(愛三)
大内(シマノ)
小野寺(マルコポーロ)
飯野(ラバネロ)
マトリックスは逃げ遅れてしまい、不利な状況。ただ救いなのは、愛三以外の主要チーム、ミヤタやシマノは多分あまり手放しで逃がそうと考えていないのではないか?そう感じたことだった。
どちらにしろマトリックス単体で追う能力がない以上、レースを止めないように森や日置には先頭で回ってはもらうが、使い切るような走りにはならないように進める。
後半に入り森が脱落。今シーズンはレースの重要なポイントでは必ずいいところにいる。ここまでいい動きをしたが、大事なところで力尽きてしまった。ここからは日置が献身的に俺の分も働いてくれる。
前を行く先頭グループとの差は約1分。俺はここまで動かずに虎視眈々と次の動きを利用しようとしている選手を引っ張り出すべくホームの直線でアタックし抜け出す。
単独で追いつくには距離がありすぎる。1分はきつい。この揺さぶりで動きたい選手を引っ張り出して前を目指すのが目的だ。
増田(ミヤタ)らが追従してくるが、協力を得られず再び集団に吸収される。
前を行くメンバーを考えればミヤタはこれ以上スプリンター系の選手には先行されたくないだろうし、仮に前に合流するなら増田よりも鈴木真理で勝負ということだろう。必ずもう一度勝負は動く。俺はそう確信し集団内で次の動きに備える。
ラスト3周。ミヤタのメンバーが集団の前に固まってペースを上げるような気配を感じる。やはり前を行く柿沼での勝負を避けたということか。俺がもし監督だったら、逃げができたところで振り出しに戻しただろう。
25人ほどで7人がミヤタ。極端な話なんでもできるに違いない。そこをあえて逃げさせたということは勝負だったのかと思ったが、ここにきて追いに入った。
先頭グループとの差が詰まると思ったが、今度はペースが上がった途端に一人ずつ脱落してペースはさっきよりも落ち始めた。想像していた以上に脚にきていたということか。
これでもう前に追いつくのは不可能だろう。この時点で今日の「勝負」は終わった。
優勝は柿沼。
去年までチームメートとして一緒に戦った仲だった柿沼が優勝したことは素直にうれしい。
独走力に優れ、近年は自分の成績よりもチームのために貢献し優勝からは遠ざかっていた。事実俺の記憶にも柿沼の優勝は存在しないほどだ。
展開的には賛否両論あるだろう。だが、それもこれもすべてレース。
先頭で柿沼が先頭交代に加わらなかったことにはいろいろ意見はあるだろうが、やすやすと柿沼に優勝されてしまった優勝最右翼と見られた大内や廣瀬にも、なにか作戦の中で「穴」が存在したのではなかっただろうか・・・
「もし」「たら」「れば」
それを言い出したらキリがない。それがあるからレースなのだ。
「もし」俺だってそこにい「れば」、きっと優勝しただろう・・・
そんなものだ。
でもそこに「もし」も「れば」もなかった。俺だけじゃなく大内や廣瀬にも・・・
実業団のランキングシステムである「Jツアー」、オープニングを制した柿沼がリーダーに。
今後は彼の着用するルビーレッドジャージを皆が攻撃対象にしていくことだろう。もちろん俺も同じだ。
レース結果
108km
1位 柿沼章(チームミヤタ)2時間43分44秒
2位 廣瀬敏(愛三)+5秒
3位 大内薫(シマノ)+7秒
4位 鈴木譲(チームミヤタ)+同上
5位 小野寺(マルコポーロ)+13秒
6位 飯野嘉則(パールイズミ)+16秒
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