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No.026 西日本実業団ロード

今年目標としているレースは5レース。最初のレースが全日本選手権だ。

今 年は元旦からいきなりのアクシデントで、自分でもスロースタートとなった。一体どこに自分のピークを持ってくるのか?それこそ極端な話だが今年はそのまま 来期以降への以降シーズンで消化してしまうのか?だがそれは一歩間違えれば選手のキャリアを終えてしまいかねない。俺はそれほどのんびりとシーズンを流し てしまうほど若くはない。1シーズンごと、1レースごとの過ごし方が常に重要。俺はシーズン後半にピークを持ってくるように考えている。

先に行われた全日本選手権個人タイムトライアルは、 それほどコンディションは悪くはなかったが序盤にスピードに乗せられず、折り返すまでに大きくタイムをロスしてしまった。折り返してからは平均で時速50 キロ。そのスピードは十分優勝と言う文字を見ることができるレベル。37歳と言う年齢でもまだまだ使えていない可能性を秘めていると、成績ではない部分で まだまだ好感触を得ていた。

全日本選手権の1週間前、同じコースで行われる西日本実業団ロード。広島森林公園伊豆修善寺日本サイクルスポーツセンターが日本のロードレースのスタンダードと化している以上、ここで好成績を残せないと「世界」への光は差し込まない。もし今の俺が今以上の進化を望むのなら、体力だけでなく生命力をも注ぎ込むつもりで挑まなければならないだろう。

その広島で行われる西日本は自分、そしてライバル達の仕上がりを見る意味で重要なレースとなるはずだ。

梅雨の快晴に相応しい、紫外線も気温もそして不快指数もボリューム最大に引き上げたようなコンディション。俺はベルギーか ら日本に帰国したとき、最初の克服しなければならない点はこの高温多湿な日本独特の雨季にあると考えていた。そのために生活パターンをも変え、今までとは 違う自分を作り出すことに成功していた。もし願いが叶うなら、高温多湿の中でのレースの方が今の自分のパフォーマンスを発揮できる、そう言いきれるほどま で体質改善できている。

スタートからまとわりつくような熱風を掻き分けるようにレースは進む。俺は2周目の長い下りの前でアタックしてみる。今日のチーム作戦は真理のJツアーポイントリーダー死守。俺の成績は二の次だ。

だ が俺とてただの駒ではない。今までの経験では誰にも負けない。いくら無線がレース器材のスタンダードになろうと言う現在でも、人の心理的なものまでが理解 できるわけではない。そこは長年の経験の見せどころ。俺の動きにはすべて意味がある。相手の動きでもそうだ。無意識に見せる守備でも、そこから必ず過去に 受けた恐怖、攻撃に備える間を繋ぐものなど、必ず何かが見えてくるものだ。それを自分への情報としてインストール出来るか否かはすべて経験だ。

俺は単独で下り終え集団をリードするように登りだす。そのときにふと「イケる」と直感。インナーに落とすことなくアウターのまま登りを駆け上がる。

しばらくするとBSの若手畑中が合流し、橋川(マトリックス)真鍋(ニッポ)大内(シマノ)二戸(なるしま)というメンバー構成の先頭グループが形成された。今日のレースは2周目にして「勝負どころ」を迎えてしまった。

後続では早い動きに戸惑いがあるはず。俺はこのまま徐々にペースアップ。俺自身次週に向けてフルスロットルに近い走りを心がける。

登りでも積極的に先頭でペースを作る。このまま行ってしまえるのか?しかしそうなると真理は大丈夫なのか?いろいろと冷静に考えながらゴールラインへの距離が縮まってくる。

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後半に入り集団から追走グループで中村(ミヤタ)野寺(シマノ)岡崎(ニッポ)飯島(BS)日置(マトリックス)らが迫っているらしい。その差は徐々に詰まっている。俺は登りで意識的にペースアップ。一旦動きを見せて勝負に出る。

登 りで唯一追従してきたのは畑中。少し意外だった。ここまでそれなりに有力選手が揃っている中で完全に陰に隠れノーマークだった。そのため先頭にもあまり出 てこなくても無視、飯島が後続にいることで先頭交代しなくてもまったく相手にしていなかった。しかし他の選手が反応の鈍る中で追従してきたことに少し不安 はあった。俺はそのまま2人で行くように諭し先頭交代をしようとすると拒否。脚がないのか勝負にこだわっているのか・・・顔を見る限りは余裕はなさそう だ。俺はここで一度後ろに下がり、次のチャンスを見る。

すると後続グループに合流され、グループは増えている。そしてそのまま中村が千切れ、飯島も千切れる。二戸は既に力尽きていたので勝負は8人ほどに絞られる。

何度か揺さぶりがあり、岡崎と野寺が登りでアタック。俺は何とか追従するがそこで力尽き、次の橋川のカウンターで離れてしまう。ここまで余力を考えず、暑いコンディションのなかを登りも常にアウターだったことで一気に消耗した。

しばらく日置と2人で追走グループ。前を行くのは橋川・岡崎・真鍋・野寺・畑中の5人。

ラスト1周のホームストレート、後続から真理を含む小グループが来ていると無線が入る。

俺はそのまま走り、登りで遅れた日置を待たず走る。そして頂上付近で後続から抜け出した真理を発見。そのまま合流し先頭を引く。

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1分ほどに離れていた先頭グループが見る見る近づいて来る。後ろからは品川(シマノ)が追いかけてくる。俺は持っている力すべてを吐き出し、ゴール前の登りまで真理を届けて力尽き、10位でゴールした。

今日のレース、自分としては90点以上の点数だったと思う。思っていた以上に登りでも踏めていた。あとは結果を残すために力をどこで出してどこでセーブするのかを見極めなければならない。

先頭グループでは畑中が早めの仕掛けでそのまま逃げ切り。彼を甘く見た野寺は差しきれず、久々にアンダーの選手が実業団レースを制することになった。

真鍋は先頭交代を拒否しゴールへ一番乗りした彼に不満な声を上げていた。正々堂々と勝負する姿勢を貫く彼には納得いかないのであろう。

だがそれは「ずるい」のではなく「ずる賢い」と、勝負の世界では褒める意味である「賢い」が付随するものだと思う。

俺だって先頭交代をほとんど拒否されて優勝されることがあれば悔しい。だがなぜそこまで拒否されてグループにいることを止められなかったのか。それは強いと思う自分達にも驕りがあったからではないだろうか。

こ のスポーツは正々堂々という表現が非常に難しいスポーツだ。単独で完全に逃げ切らない限り、必ず誰かを「ずる賢く」利用しなければならない。俺だって攻撃 して半死の選手が千切れそうだからと待つことはない。そこで勝てるからいいだろう、というのは驕り意外なにものでもない。

ただ言えることは

「同じ過ちを繰り返さない」

それだけだ。

個人的には好感触で終えた今回の西日本実業団ロード、次週の全日本選手権に向けて収穫は多かったように思う。

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