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No.030 実業団クリテリウムin白浜

’06クリテリウムin白浜

今年から始まったJツアーシリーズ。現在真理がリーダージャージに袖を通している。チームとしてはなんとか真理に総合優勝をしてもらうべく全力で働いている。

シーズンも残り半分を切っているし、そろそろポイントを考えた動きをしっかりとしていかなければいけない。今回の白浜はキーポイントとなるに違いないレースだ。

俺はランキングは常に10位前後。アシストに回る機会が多いからこの成績は妥当だ。ランキング上位に何人もいるより、1位にいる方が価値がある。そのために自分が10位だったらそれはそれでいいし、もし30位だったらそれもありだと思う。

白浜のコースは単調な直線を行って戻ってくるだけのコース。コーナーはUターンが2回あるだけ。白浜空港の旧滑走路を走るので、正直どこがポイントか?と言うとどこにもない。ただこういうコースは昔から思うのだが危険だ。

ベルギー時代、コースが単調で出場人数が少ないと入賞の可能性も高いし・・・と思っていると、そういうときに限ってレースは難しい。

中盤までは動きは少ないが、後半にはアタックが頻繁になり、動けない選手が増えるとますます逃げが決まりやすくなり、そして残ったメンバーで牽制が厳しくなる。俺はその都度、何度なく「獲れるレース」を落としている。

「逃げが決まらないコース」なんてものは存在しない。

スプリンターのクラシックと呼ばれるヘント〜ウェベルヘム、ドイツハンブルグのバッテンフォールサイクラシックス、そしてパリ〜ツール・・・テレビで見ても分かるように、意外と逃げが決まったりするものだ。

この白浜も俺はそう感じた。なぜならあまりにも単調すぎるから。

差がついても見ていて差を感じない。いつでも追えるような気がする。俺が何より「決まるな」と感じさせた最大のポイントは、暑さと風だった。常に若干だが横風なのだ。

2年前の神戸のクリテリウムも「逃げは無理」と言われながら、俺はきっちりと逃げを成功させて2位に入賞した。あのときの気持ちが蘇る。必ず逃げを決める。

スタートから俺はなるべく集団の前で展開する。勝負はなるべく前でする方が好ましい。俺と逃げたい奴らは躊躇せず攻めるだろうし、逃げたくない奴らは、責めるのを躊躇するはずだ。

序盤から少人数の逃げは続くものの、長続きしない。俺は真理を含めて彼のライバルになる選手の動きをチェックしながら走っていく。

勝負も後半に差し掛かる頃、俺はアタックを開始。そのとき後ろにいた選手が俺の変速機にひっかかりRエンドを曲げ、そして後輪も走れないほどのダメージを受けてしまった。そのためニュートラルを利用して交換、集団に復帰する。

そしてその周にレースは動いた。

特 にアタックと言うものではなかったが、スピードアップした際に前からどんどん集団は分断化されていく。俺は集団復帰直後で集団の前の動きは見えない。ただ 「ヤバイ!」と感じ、まるでトラックレースのゴール前のように、先行する選手達を追っていく。何度となく前から千切れた選手をパスする。

気が付くとそこには主要選手の大半が入っている。

山本・阿部・廣瀬(シマノ)

廣瀬(愛三)

真理・増田・高野・俺のミヤタ勢。

そして手ごわいなと思っていた小室(ダイハツボンシャンス)とホジェリオ(スペードエース)などなど。

総勢20人ほどだ。

俺 はこの上ないメンバーだが、もし真理に託すなら山本は最低限このグループから削除しておきたいと考えていた。丸岡でも差し込まれていたし、確実に得点差を 生もうとするなら、厄介な存在だ。それは阿部にしても同じだ。彼の場合は登りを無難にこなすので、全日本実業団、富士山、そして飯田でJツアー大逆転もあ り得る。どこにポイントを置いてレースを進めるのか・・・

ラスト4周を切って、ゴール前の緩い登りを利用してまず仕掛ける。これに反応してきたのはこの日好調な阿部。そしてその後ろに真理、そしてなるしまの吉田。この4人で先頭グループをブレークする。

集団は追う立場の選手の方が少ない。差は広がっていく。

まさか俺が攻撃することはないと皆思っていただろう。だが俺が動くことで真理は後方でギリギリまで温存できるし、Jツアーポイントを狙うなら逃がせない。一瞬躊躇する瞬間が訪れるのは明らかだった。

こ の逃げほど魅力的なものはなかった。うまくいけばワン・ツーフィニッシュである。阿部は途中で先頭交代拒否。これは後ろの山本を考えてのことか?もし俺 だったら逃げに協力するだろうな、と思った。それは一番ポイントを稼ぎにくいこのコースで上位入賞することが、阿部にとってJツアー全体を考えれば一番正 攻法だからだ。多分山本よりも確実にJツアーランキングは上にいくだろう。だが引かないということは山本単独エースか?そう考えても構わないだろう。

俺は真理と吉田に先頭に出るよう協力を求めるものの、ほとんどは俺の仕事となる。かなりきつい。ここまで来れば躊躇してはいけない。すべてを吐き出すつもりで踏んでいく。

ラスト2周で増田と廣瀬が合流。6人で3人がミヤタだ。こんな有利な状況はそうそう訪れない。俺は我慢して真理のためになるよう、積極的に先頭に出て引くようにする。

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ラスト1周を切り後続はシマノが追走し合流してしまう。ラスト1キロほどで再び集団に。

ここまで全力で走ってきただけに、スプリントで取れるという自信はない。最後の直線でスプリンターのラインは

真理=山本=ホジェリオ=俺の並び。

俺はこの日、ずっとホジェリオのことは常に頭の片隅にあった。それは彼がこの日ずっと気になるほどいい走りをしていたし、彼のスプリント力も知っている。あくまでホジェリオは山本のマークを主張。俺は山本の後ろではなかったがあまり気にしなかった。道幅もあったし脚が残っていれば最後には勝てる可能性はある。問題は脚があるのか?だ。

最後の直線、往年の名選手松井さん(ナカガワ)が単独で少し飛び出す。集団は残り距離を躊躇して牽制気味。まさか松井さんが優勝かぁ?

と思ったところで、思い切りよくホジェリオが飛び出した。真理と山本は反応できず一気に差が開く。俺は・・・

その状況をすかさず反応しながら冷静に見ていたように思う。

53Tx11T

このコースのゴール前の登りだったら踏み切れるギヤだ。ただホジェリオのダッシュが強烈なこと、そして俺自身脚に余力がないことで差が開く。だが諦めない。それは俺自身のプライド。負けたくない。それだけが俺の背中に追い風を作る。

ラスト100m。ホジェリオはほんの少し後方に目をやった。多分そこで自分を追従する者がいないと悟ったのだろう。50mを切って顎が上がった。

「差せる!」

まだ50mある。俺はまだ11Tが止まっていない。勢いがある。届く!

そしてラスト10m、ホジェリオは確信したのか脚の力が抜けていく。俺は迫り並ぶ。そしてゴールライン・・・

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ゴールラインを超えるとき、俺ははっきりと俺が先着したことを確認。ホジェリオは完全に失ったことを悟っていた。

手を挙げなかったら彼は逃げ切っていた可能性は高い。しかしかなりのロングスパート。後半は明らかに失速気味だった。そのタイミングが彼に手を挙げさせたのかもしれない。

勝負に「タラレバ定食」はいらない。

もし○×だったタラ・・・もし○×レバ・・・

残るものはすべてリアルなもの。

今期シマノもてぎに続いて2勝目、そして実業団レースは去年の丸岡以来だ。

次週にはナショナルチームとしてインドネシア遠征、そしてその後のアジア選手権と続く。

これで準備は揃った。あとはこれらのレースで結果を残していくことだ。

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