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No.009 今シーズン初レース
〜2002年「クールネ〜ブリュッセル〜クールネ」より〜
ようやく今シーズンの初レースにこぎつけた。3月3日の「クールネ〜ブリュッセル〜クールネ」である、。去年より1ヶ月遅いシーズンインだ。
いくらトレーニングで走り込んでも、レースの強度や距離とは比べることができない。
特にシ−ズン序盤は、多くのレースをこなすことで体を作っていくことができるし、レース感を取り戻せる。
野球で言うところのオープン戦的感覚だろうか・・・
そう言う意味では、既に10レースほどを消化している連中と比べるとハンディだ。しかしそんなことは言い訳にはできない。ただ走るのみである。
昨晩から初レースと言うことで少し緊張。しかし11時には就寝。朝は8時過ぎまで寝ていた。
クールネ〜ブリュッセル〜クールネのスタート地点であるクールネの町は、俺のアパートから2キロほどしかない。10時半に更衣室に行けば十分に間に合う。そう言う気軽さも土曜日のヘットフォルク出場を選ばず、クールネ〜ブリュッセル〜クールネを選んだ理由でもある。
(ヘットフォルクのスタート地点ゲントはここから40キロ、ゴール地点のローケレンはそこから更に20キロ。スタート&ゴールが違うのは面倒だ)
家で家族と一緒に朝食を取り、その後スタート2時間15分前にパスタとコーヒー(コーヒーはただ好きなだけ。別に意味はない)を取る。
更衣室に着くと昨日のヘットフォルクで3位に入賞したファンハックと談笑。ラスト1キロは向かい風だったらしく、かなりきつかったようだ。
「脚がだるいよ」と笑顔で話す彼。しかし後半になればきっと疲労は抜けていることだろう。
天候はすこぶる快晴。気温は5度ぐらいだろうか・・・風も穏やかだ。
スタート前にチームのキャンピングカー内で、今日の作戦を監督から告げられる。今年からチームカーにキャンピングも加わったのだ。
スタート直前まで暖かいところを確保できるのは申し分ない。
監督の作戦は。ファンハックにはデワールとファンランデゲムがフォロー、ソレンセンにはカバニス、ストリールがフォローというもの。
他 のメンバーは集団の前でコントロール。とにかく完走を考えるのではなく、チームとしての走りに徹して欲しいとのこと。もしそれでも個人の走りをしようとす るなら、来週からのチームプログラムはケルメス(個人レースのみ)だけだと考えて欲しい、と言う強い口調のものだった。
それは言い換えれば、ファンハックとソレンセンに良い結果を残してもらうように動く、と言うものだ。
(ファンハックとストリール。北ヨーロッパのレースでのポイントゲッターだ)
一番左が俺。中央にソレンセンやポポヴィッチを囲んで
この春先のベルギーでのクラッシックレースシーズンは特別な意味を持つ。
フランドル、そしてリエージュ〜バストーニュ〜リエージュまでは、ベルギー国内のスポンサーに最もインパクトを与えられる。そのためにもテレビ放映されるヘットフォルクやクールネ〜ブリュッセル〜クールネ、それに次週からのレースもきっちりとチームで結果を残さなければならない。
そのためには「役」にたたない人間は要らない。
俺もとりあえず初レースだし、どれだけ走れるかまったく分からない。集団の前をキープして走るよう心がける。
1キロ地点でボンジュールの選手がアタック開始。
毎年このレースは序盤から激しい。そのためみんながある程度動きを読んでいたので、いろんな選手が反応。しかし最後まで差を詰めない。
俺は1人で差を詰め、そのままアタック。結構脚は軽い。もう止められない。俺の血に火がついてしまった。とにかく隙を見てはアタックをかける。
50キロ地点までほぼすべての逃げに反応。その数少なく見積もっても30回以上!正直補給地点でリタイヤしようと考えていた。
50キロ過ぎで集団のスピードダウン。ここで来ていた袖無しジャケットをチームカーに届ける。ついでにチームメートのジャケットを集めていくと、あっという間に6着。両手に溢れるジャケットをチームカーに届け、すぐに集団の前方に戻る。
55キロ過ぎ、ここでジャデラトゥールのクリブトソフ(ウクライナ)がアタック。フラーンデレンのウェントゼル(南アフリカ)も単独追走する。
集団はここからしばらく向かい風なので、集団は様子を見る。
ラ・フラーンセーズ・デ・ジュのゲドンが鋭く集団から抜け出し、俺は反応、集団から抜け出す事に成功した。
しばらくして前の2人を吸収し4人の先頭グループになる。
集団は勝負所の登りを前に主導権を握りたくないのでイージーペース。その間に俺たちは最大7分30秒の差を付けた。
ゲドンは明らかに「三味線」を引いていると思われる。ワールドカップレースに優勝経験のある彼のこと、俺たちのスピードと同等のはずがない。後半に脚を残しているようだ。
ジャンデラトゥールの選手はちょっときつそう。フラーンデレンの選手も同じくだ。
俺はきつくはないが、心拍はやや高め。初レースだから仕方がない。それに序盤に動きすぎた。
集団はどこかのチームが追走を開始したようで一気に4分半に差が縮まる。俺たちリーディンググループは規則的に先頭を交代し、最大の難関である「アウデ・クワーレモント」まで逃げ切るべく走る。
集団はどんどん差を縮める。
カナリエベルグ(別名:ミュージック・ボス)で俺はかなりきつく、3人において行かれるが下りで追いつく。
他の連中はきつそうなのだが、結構レースをこなしているのだろう。高強度で耐えられる時間が俺より長いようだ。俺は先頭交代を2回に1回しか前にでないようにする。
俺は次のクルイスベルグ(ロンセ)でも千切れてしまう。ここからゴールまで約70キロ。アウデ・クワーレモントまでは7キロほどだ。
俺はそのままイーブンペースで後方を待つ。
アウデ・クワーレモントまで3キロほどで強力な追撃グループに吸収。
- エークハウト(ロット)
- ファラザイン(コフィディス)
- ファンダイク(パルマンス)
- マキュアン(ロット)
- バグェ(ロット)
- オグレーディ(クレディ・アグリコル)などだ。
集団はこのグループを吸収すべく追走している。俺としてもチームメートが入っていないこの逃げは潰して欲しい。ただ、できることならアウデ・クワーレモントの中盤あたりで集団が合流してくれれば、俺もゴールに辿り着ける可能性がある。
しかし予想通りというか入り口直前で吸収され、アウデ・クワーレモントの中腹で俺は完全に「バッテリー切れ」。
まだ後ろからグループがやってくるが、頂上でチームカーにリタイヤすることを告げ、ゴールのクールネへとサイクリングで帰った。
ゴール地点の更衣室へ直行する。
チームのキャンピングカーで待機していたマッサージャーに「テレビでかなり映っていたぞ!名前もかなり呼んでもらっていたしなぁ」と喜んでもらった。かなり長い間テレビに映ったおかげで、レース後にサイン攻めにあった。
監督の作戦通りの走りができたし、初レースとしては上出来だったと思っている。十分次回レースに繋がる結果だったと思う。
後半、ロットが主導権を握るレースだったが、キルシプー(Ag2r)が逃げグループから抜け出しての優勝。本来スプリンターの彼だが、逃げグループで最後にマークされるのを嫌ってのことだった。
バグェ(ロット)が2位、3位はカッサーニ(ドモ)だった。
チームメートのデワールがこの逃げに入り、12位でのゴールだった。
この週末(ヘットフォルク&クールネ〜ブリュッセル〜クールネ)で、チームはポイントも稼ぎ、テレビでも十分に存在をアピールできた。
俺自身もこれからの長いシーズンを戦うにあたって、十分良い感触を得ることができた。
これから続く北のクラッシックレースで、良い結果を残したい。
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