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No.003 '99フランドル一周 後編

NOKERE郊外にある石畳の長い通り。そこから小さなこぶのような登りが始まる。これがフランドル一周の最初の丘だ。

石畳の入り口手前からペースが上がる。家も近所で知り尽くした場所。どこのラインだと石畳が切れているとか、どこのラインだとスムーズに走れるかを完全に知り尽くしていた。しかし集団の中ほどじゃ思ったとおりのラインなどなかなか通れない。道を把握していないイタリア人が前で落車したりと、いきなり知っているはずのフランドル一周で洗礼を受ける。

最初の石畳は集団後方でクリアーした。次はOudenaarde周辺の「激坂ツアー」の幕開けだ。

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集団の前方へと移動する。移動する際にチームメートを見つければ連れて上がる。

俺の仕事は完走することじゃない。完走はしたいが、まずは結果を残すことを求められているチームメート、ミッシェル・ファンハックらに好成績を残してもらうために走ることだ。

いくつかの激坂をクリアーし、長い石畳が続くMaterの登りで力が入らなくなって集団から千切れてしまった。

その後何人かと追走するが、MolenbergからPaddestraatへと向かうところで、復帰できず自転車を降りた。

せめて後半の勝負どころとなるOude Kwaremontを走りたかったが、これがワールドカップの凄さなのだろうか。今までのセミクラッシックの疲労度とは全然違う。頭では理解しているのだが、体はまったくいうことを聞かない。

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(フランドル一周の勝負どころが始まるのは、このOude Kwaremontからといっても過言ではないだろう。2,200mのセクションで、平均勾配4.2%、最大11%の登り、そしてのぼりの途中から始まる1500m石畳区間があり、プロフィール以上にきつい)

補給地点でマッサージャーの運転するチームカーに乗り込み、ゴール地点へと先回りする。

ゴール地点横にある更衣室にはテレビがあり、リタイヤした選手達とレースの行方を見守る。

ファンハックは良い位置につけていたが、ビッグネームを相手にして一気に消耗し脱落。これが本当のクラッシックレースだ。中途半端な奴じゃ話にならない。

ミュセウ、ファンペーテヘム、ファンデンブルックの3人が抜け出しゴールスプリント、ファンペーテヘムが優勝した。

その瞬間、更衣室の外にいる観衆がざわめき、このレースの凄さを再び思い知った。

これは戦争なのだ。レースなんかじゃない。

俺はこれまでどおり、ただ単に「レース」を走っていた。だからこの「戦争」では戦えず、あっけなく死んでしまったのだろう・・・「戦争」の準備などまったくしていなかったのだから。

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(写真はフランドル前哨戦である「Dwar Door Belgie」(ベルギー・1-2)でのもの。フランドル一周はこれよりも何倍もレベルは高かった)

その昔「戦士」のことを指していた「フランドリアン」と言う言葉。

今ではミュセウをはじめファンペーテヘムらに使われるが、それは的を得ていると思った。

サポーターに送られて帰る家路、それは先ほどまで戦場だったのが嘘のように、今はただの田舎道となっていた・・・

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